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洗顔料のpHはどのくらい肌に影響する?

7 Mar 2026 • 加賀 裕章

洗顔料のpHはどのくらい肌に影響する?

洗顔料のpHは、どこまで影響するのか

「弱酸性が肌に良い」とよく言われます。 では、弱アルカリ性の洗顔料は避けるべきなのでしょうか。

以前の記事では、健康な皮膚表面のpH(いわゆる「肌のpH」)が弱酸性に保たれる理由と、洗顔料開発の視点から、弱酸性洗顔料が洗顔によるpH変化を最小限に抑えるよう設計されていることを解説しました。 本記事では、分かりやすさのため以降「肌のpH」と表記します。

一方で、石鹸をはじめとする多くの洗顔料は弱アルカリ性です。

そもそも、弱アルカリ性であること自体が問題を意味するのでしょうか。

洗浄後、肌のpHはどう変化するか

まず、洗浄という行為そのものによって、肌のpHは一時的に上昇します。

ある試験では、一定の洗浄条件下※1で、石鹸(本試験でのpHは明示されていませんが、一般的な石鹸はpH9–11程度とされています)、水道水(pH約8)、シャワーゲル(pH6)を用いた場合の洗浄前後の肌のpH変化が比較されています¹。

下記のグラフは、原著論文の図を参考に、数値を概算して傾向が分かるよう再構成したものです。

Figure1_jp

図1 Lambersら¹の原著論文掲載図より概算値を読み取り再構成(筆者作成)

いずれの条件でも、洗浄直後に肌のpHは上昇し、その後時間の経過とともに元の値へ回復する傾向が示されています。

つまり、洗浄によって肌のpHは上昇するものの、皮膚にはそれを回復させる仕組みが備わっていると考えられます。

製品pHと肌のpH変動の関係

ここでいう「製品pH」とは、試験で使用された洗顔料や洗浄剤そのもののpHを指します。

複数の研究をまとめたレビュー論文では、洗浄前後の肌のpHの変化や、その後どの程度で元の状態に戻るかは、使用した製品のpHとある程度関連している傾向があると報告されています²。

なお、このレビューは既存研究を整理したものであり、統計的な再解析を行ったものではありません。

さらに同レビューでは、洗浄を繰り返した条件下において、

  • 洗浄前後の肌pHの変化の幅:±0.0〜+3.0
  • 元の状態に戻るまでの時間:45分〜8時間(条件によっては12時間)

と報告されています。

pHが最大で約3程度上昇する可能性があるというのは、決して小さな変化とは言えません。

これは、弱酸性だった肌のpHが、一時的に中性付近まで上昇する可能性があることを意味します。

post-wash_pH_jp

もっとも、こうした変化は持続するものではなく、皮膚には本来の状態へと回復する機構が備わっています。

製品pHや試験条件によって、肌のpHがどの程度変化するか、またどのくらいで回復するかに違いが生じる可能性があります。

ただし、これらは洗浄を繰り返した実験条件で得られた結果であり、日常の使用状況と完全に一致するとは限りません。

製品pHだけで決まるわけではない

一方で、製品pHだけで肌のpH変化が決まるわけではないことを示す報告もあります³。

comparison_jp

中身は同じでpHのみが異なる洗顔料(pH4.5とpH7)を同条件※2で比較した試験では、洗浄前後の肌のpH変化に明確な差は認められませんでした。

しかし、pHは同じ(pH4.5)で、洗浄成分のみがわずかに異なる処方を比較した場合には、洗浄前後の肌のpH変化に差が確認されています。

これらの結果は、洗浄前後の肌のpH変化が製品のpHのみならず、処方組成の違いにも影響を受ける可能性を示しています。

つまり、pHは重要な目安のひとつではありますが、それだけで全てが決まるわけではありません。

それでも、製品pHを知る意味はある

処方全体を理解するには、まず要素を分けて考える必要があります。

pHは、その中でも比較的把握しやすい指標のひとつであり、処方設計の方向性を推測する手がかりにもなります。

ただし、洗顔前後の肌のpH変化の幅は多因子的です。 製品pHだけでなく、配合成分、処方設計、使用条件、皮膚状態など、複数の要素が関与します。

それでも、製品pHは数値として客観的に確認できる数少ない変数のひとつです。

洗浄前後のpHの変化の幅や回復時間に一定の幅があることも整理されています。

すべてを一度に理解することは難しくても、「pH」という一つの変数を知ることは、不確実性を小さくすることにつながります。

pHは万能ではありません。 しかし、洗顔料を構造的に理解するための“最初の足がかり”にはなり得ます。

あなたの洗顔料は、どのpHですか?

あなたが毎日使っているその洗顔料のpHは、どの範囲にありますか。

本サイトでは、洗顔料のpHデータベースを公開しています。

数値を知らずに選ぶか、確認してから選ぶかで、判断の精度は変わります。

現在使用している製品や、購入を検討している製品があれば、一度確認してみてください。

※1 n = 14、前腕掌側、Skin-pH-Meter 900(Courage + Khazaka)により測定

※2 n = 63、前腕掌側、Skin-pH-Meter 900(Courage + Khazaka)、温度21℃±1、湿度50%±2、測定3回、塗布量5μL/cm²、水道水使用、水温38℃、洗浄後乾燥し10分後に測定

参考文献

1) Lambers, H.; Piessens, S.; Bloem, A.; Pronk, H.; Finkel, P. Natural Skin Surface pH Is on Average Below 5, Which Is Beneficial for Its Resident Flora. Int. J. Cosmet. Sci. 2006, 28 (5), 359–370. https://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1111/j.1467-2494.2006.00344.x

2) Blaak, J.; Staib, P. The Relation of pH and Skin Cleansing. Curr. Probl. Dermatol. 2018, 54, 132–142. https://doi.org/10.1159/000489527

3) Springmann, S.; Blaak, J.; Grabmann, S.; Simon, I.; Staib, P. Impact of Cleansing Products on the Skin Surface pH. IFSCC Magazine. 2013, 1, 17-24

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著者紹介

加賀 裕章のプロフィール画像

加賀 裕章Hiroaki Kaga

博士(工学)。大手化粧品メーカーにて10年以上、主にスキンケア製品の研究開発に従事。洗顔料・クレンジング製品を中心に、処方設計から製品評価まで幅広く担当してきた。
専門は、大学での研究を基盤とした微生物由来界面活性剤(バイオサーファクタント)の洗浄機構と皮膚適合性を踏まえた洗顔料・クレンジング製品の処方設計・評価。洗浄力と肌へのやさしさの両立をテーマに研究および製品開発を行ってきた。
現在は、化粧品処方開発・製品評価のコンサルティングおよび化粧品科学に関する記事監修・情報提供を行っている。

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